2026.01.26
相続税が払えないときの不動産売却という選択肢
納税資金が足りない場合の現実的な対処法と判断基準
はじめに|「相続税が払えない」という現実は珍しくない
相続が発生した直後、多くの方が次のような状況に直面します。
- 相続税の試算をしてみたら想像以上に高額だった
- 財産の大半が不動産で現金がほとんどない
- 複数人で相続しており意見がまとまらない
- 納税期限まで時間がなく焦っている
- 金融機関に相談したが融資が難しいと言われた
相続税は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に申告・納付する必要があります。 この期限は非常に厳格で、延ばすことは原則できません。 しかも相続税は原則現金一括納付です。不動産でそのまま支払うことはできません。
延滞すれば延滞税が加算され、最悪の場合は財産差押えや公売へ進む可能性もあります。 公売になると市場価格より大幅に安くなることが多く、売主側にとって極めて不利な結果になります。
そのため実務では――
不動産を売却して納税資金を確保する
という選択肢が、もっとも現実的で合理的な方法として検討されます。
相続税は「現金で払う」が原則|延納・物納は簡単ではない
相続税は法律上「現金での一括納付」が原則です。例外として、 延納(分割払い)・物納(不動産などの現物で納める)がありますが、 いずれもハードルは非常に高く設定されています。
延納(分割払い)は許可制で条件が厳しい
- 税務署の許可制
- 担保の提供が必要
- 利子税がかかる
- 原則5年以内(特別な事情で延長)
- 財産内容の厳格な審査
物納はさらに厳しく、実務上は通らないことが多い
- 境界確定済みであること
- 担保価値が高いこと
- 国が管理しやすい土地であること
- 建物付きは基本不可
- 再建築不可土地などはほぼ認められない
特に都市部や福岡市中心部の土地、収益物件などは評価額が高くなりやすく、 現金が残っていないと一気に資金繰りが詰まります。
相続税が払えないとどうなるのか|放置すると起きる現実
期限までに相続税が支払えない場合、一般的に次の流れになります。
- 税務署からの督促
- 延滞税の加算
- 差押え予告
- 財産の差押登記
- 強制換価(公売)
重要なのは、差押え後は売却の自由度が一気に下がるという点です。 税務署が関与すると、売却価格への介入、任意売却の交渉難化、公売で大幅に安く処分されるなど、 不利な状況に陥りやすくなります。
そのため実務では、差押え前に自主的に売却して資金を作ることが圧倒的に有利な戦略になります。
相続税対策としての不動産売却の位置づけ
相続不動産の売却は、投資物件の出口や買換えとは意味が違います。 最大の目的はただ一つ、納税資金の確保です。
重要になる3つの判断軸
- どの不動産を売るのか
- いつ売るのか
- どの方法で売るのか(仲介か買取か)
ここを誤ると、本来残せた不動産まで売ることになる、安い時期に処分してしまう、税務特例を逃す、 家族間トラブルに発展する――などの二次被害が起こります。
売却以外の方法との比較|借入・延納・物納の限界
金融機関からの借入
相続人個人が融資を受けて納税する方法もありますが、実務では 高齢・収入不足・担保評価が出ない・他の不動産に抵当が入っている等で使えないことも少なくありません。
借入ができたとしても、毎月の返済負担・利息・将来の売却制限などの問題を抱えます。
延納は万能ではない(時間を稼ぐ制度)
- 申請書類が非常に多い
- 税務署の審査が厳格
- 担保設定で登記費用がかかる
- 利子税が発生
- 結局途中で売却するケースも多い
物納は最終手段(リスクが大きい)
- 実務上はほとんど通らない
- 数年単位で時間がかかる
- 境界確定・測量が必須
- 途中で却下されると資金繰りが詰む
売却する不動産の選び方|失敗しない考え方
相続財産に複数の不動産がある場合、「とにかく高そうなものから売る」という判断は危険です。 実務では次の観点で整理します。
- 収益性が低い
- 修繕費がかかる
- 空室が多い
- 再建築不可
- 管理負担が重い
- 共有トラブルが予想される
- 将来価値が伸びにくい
これらを総合的に見て、残す物件と処分する物件を分けるという発想が不可欠です。 また、税務特例が使える物件、時間をかけて高く売れる物件、買取向きの物件を仕分けることで、 全体の手残りを最大化できます。
売却タイミングの注意点|10か月は想像以上に短い
相続税申告期限は10か月。しかし実務で必要なのは、 相続登記、査定、測量、境界確認、建物調査、媒介契約、販売期間、契約、決済――です。 これを考えると、実質的に余裕はほとんどありません。
特に福岡市中心部や収益物件では、買主の融資審査・金融機関評価・デューデリジェンスに時間がかかります。 そのため理想は、相続発生直後から売却準備に入ることです。
譲渡所得税との関係(相続不動産売却で必ず検討すべき税務ポイント)
相続で取得した不動産を売却した場合、原則として「譲渡所得税」が課税されます。 譲渡所得は次の計算式で求められます。
売却価格 −(取得費+譲渡費用)=課税対象額
取得費が不明だと税負担が跳ね上がる
相続では取得費が分からないケースが多く、取得費不明の場合は 「売却価格の5%を取得費とみなす」ルールが適用されます。 ただし取得費が極端に低くなり、課税所得が大きくなるため注意が必要です。
使える可能性がある特例(要件は厳格)
- 取得費加算の特例(相続税の一部を取得費に上乗せ)
- 空き家3,000万円控除
- 居住用3,000万円特別控除
特例の使い分けを誤ると、数百万円〜数千万円単位で税額が変わることも珍しくありません。 相続不動産の売却では、売却前に税理士と連携して税額シミュレーションを行うことが不可欠です。
専門家と連携しないと危険な理由(相続売却は総合戦)
相続税絡みの不動産売却は、税務・登記・境界・測量・共有調整・金融機関・契約不適合責任・借家人対応・解体・行政対応など、 極めて多岐にわたります。不動産会社単独で完結できる案件はほとんどありません。
税理士と連携しない場合のリスク
- 特例が使えない
- 売却時期を誤る
- 二重課税に近い状態になる
- 納税資金が不足する
司法書士が関与しない場合
- 相続登記が間に合わない
- 持分移転不可
- 決済延期
- 買主融資が止まる
弁護士が必要になる場面
- 共有対立
- 明渡し
- 境界紛争
- 仮差押
- 遺産分割調停
測量士・土地家屋調査士の役割
- 境界確定
- 分筆
- 越境整理
- 登記修正
相続不動産売却は、最初から専門家チームで設計することが最大のリスク回避策になります。
福岡エリア特有の相続売却の注意点
福岡市中心部では、地価上昇・再開発・収益需要・容積率評価・デベロッパー需要などが絡み、 売却戦略によって価格が大きく変わります。
単純な机上査定ではなく、金融機関評価、容積消化率、建築可能ボリューム、用途地域、接道、セットバックまで精査しないと、 本来の価値を取り逃がすことになります。
まとめ|相続税が払えないときに最も大切なのは「早期設計」
相続税対策の不動産売却で重要なのは、 税務シミュレーション、売却対象の選別、共有整理、売却時期、専門家連携、 売却方法(仲介/買取)を同時並行で設計することです。
単に「売ればいい」ではなく、どう売るか、いつ売るか、何を残すかまで含めて戦略的に考える必要があります。
株式会社BEST BALANCEの相続不動産売却サポート(福岡)
当社では相続が絡む不動産売却において、次の内容までワンストップで対応しています。
- 税理士連携による税額試算
- 納税期限を見据えたスケジュール設計
- 仲介と買取の並行検討
- 業者入札による価格最大化
- 境界・測量整理
- 契約条件の設計
- 共有調整支援
- 金融機関評価整理
仲介手数料について(当社の方針)
価格帯別の手数料体系
- 5,000万円以上:売主様の仲介手数料:原則 1%+消費税
- 3,000万円〜5,000万円:仲介手数料:50%相当を優遇
- 3,000万円未満:通常の仲介手数料
特別プラン(高額物件)
1億円以上の物件で、当社が買主様も直接仲介できた場合(両手取引)は、
売主様の仲介手数料は0円となる場合があります。
相続税の不安が出たら「売る前」に必ず相談を
相続税は待ってくれません。
いくら必要なのか/いつまでに払うのか/売却すれば足りるのか/他の選択肢はないか。
この整理だけで、結果は大きく変わります。
売却を決めていない段階でも問題ありません。まずは全体設計から行うことが、後悔しない相続対策の第一歩です。

